『愉快な鱒』(「シューベルト『鱒』主題による変奏曲」)
平成14年6月14日
フランツ・シェッグル(Franz Schoggl) 作曲『愉快な鱒』(「シューベルト『鱒』主題による変奏曲」)
混声合唱団Locus(常任指揮者川合良一氏)第5回定期演奏会(平成14年2月16日於江戸川区総合区民ホール)の記事がインターネット上に公開されていますが、演奏曲目『愉快な鱒』の解説も載っていましたので参考までに紹介しておきます。
有名なシューベルトの歌曲「鱒」をモーツァルト、ベートーベン、ワグナーなどの作品風の合唱にアレンジしたパロディーソング。イタリア風、ウィンナーワルツ、ロシア民謡などさまざまな味付けがなされている。
- Thema: "Die Forelle" von Franz Schubert
『鱒』の主題。いかにも鱒が気持ちよく泳いでいる感じがする。 - Mozart: Eine kleine Nachtforelle
モーツァルト作曲『アイネ・クライネ・ナハトムジーク(Eine kleine Nachtmusik)』による編曲。 - Beethoven: Zur Ehre der Forelle
ベートーベン作曲『自然における神の栄光(Die Ehre Gottes in Natur)』による編曲
(注)『自然における神の栄光』は「コールアカデミー関西OB会2000年コンサート」のアンコール曲でした。 - Weber: Der Freifisch
ウェーバー作曲オペラ「魔弾の射手(Der Freischutz)」『狩人の合唱』による編曲。 - Wagner: Fischerchor
ワグナー作曲オペラ「タンホイザー」『巡礼の合唱』、オペラ「ローエングリーン」『婚礼の合唱』による編曲。 - Gebirgeforelle am spaten Abend
8分の6拍子の大変優雅な牧歌的の旋律と美しいハーモニーの編曲。 - Forelle nach Wiener Art
4分の3拍子のウィーン風の編曲。 - Forella Italiana
ピアノ教則本バイエルの挿入曲として使われている『ティリトンバ(おまじない)』による編曲。 - Wolga-Forelle
ロシア民謡『ステンカラージン』による編曲。 - Fischfang mit Lis(z)t
リスト作曲『ハンガリア狂詩曲第2番』による編曲。
(末木)
シューベルト『鱒』変奏曲
コールアカデミー関西OB会の曲目「Franz Schoggl編曲「シューベルト『鱒』変奏曲」の原曲は余りにも有名で歌詞を紹介する必要はないかも知れませんが、一応紹介させていただきます。
手許のエンジェル盤LPレコード「ピアノ五重奏曲『鱒』」の曲目紹介には「ゲーテの詩による歌曲『鱒』・・・」とあります。ピアノ演奏がヘフツィバー・メニューイン(ユーディ・メニューインの妹)でレコードがちょっと古過ぎるのかも知れませんが、これは明らかに間違いで原作者はドイツロマン派の抒情詩人クリスチャン・フリードリッヒ・シューバルト(1739~1791)です。(平石英雄氏の労作「F.P.シューベルト全作品目録」で確認。シューベルトにシューバルトで名前が紛らわしいですね)
(原詩と対訳はNHKラジオ「ドイツ語講座」テキスト2000年7月号記載の「山路朝彦氏『ドイツの詩歌でドイツ語を』」に拠っています。)
Christian Friedrich Daniel Schubart
Die Forelle
(1782)
In einem Bachlein helle,
Da schoss froher Eil.
Die launische Forelle
Voruber wie ein Pfeil.
Ich stand an dem Gestade,
Und sah in susser Ruh
Des muntern Fisches Bade
Im klaren Bachlein zu.
Ein Fischer mit der Ruthe
Wohl an dem Ufer stand,
Und sah's mit kaltem Blute
Wie sich das Fischlein wand.
So lang dem Wasser Helle,
So dacht' ich, nicht gebricht,
So fangt er die Forelle
Mit seiner Angel richt.
Doch plotzlich ward dem Diebe
Die Zeit zu lang. Er macht
Das Bachlein tuckisch trube,
Und eh' ich es gedacht;-
So zuckte seine Ruthe,
Das Fischlein zappelt dran,
Und ich mit dem regem Blute
Sah' die Betrogne an.
クリスチャン・フリードリッヒ・ダニエル・シューバルト
『鱒』
(1782年の作品)
明るく澄んだ小川に、
嬉々としたすばやさで泳ぐ
気ままな鱒、
矢の様に過ぎていく。
私は岸辺に立ち、
心地よい静けさで眺めていた
その元気な魚が
澄んだ小川の中で泳ぐのを
一人の竿を担いだ漁師が
岸辺に立ち、
冷ややかに眺めていた
その小さな魚が踊る様子を。
水に明るさが、
私はそう思った、なくならない限り、
彼も鱒を捕まえることは
その釣り針でもできないだろうと。
しかし とうとうその盗人は
待ちきれなくなった。彼は
小川を意地悪く濁らせた。
私があっと思うまもなく;-
釣り竿がぴくりと動くと、
もうその魚はかかっていた、
私は血をたぎらせて
だまされた鱒をながめていた。
シューベルトが1817年に作曲した『鱒』は第三節までで、次の第四節の詩には曲を付けていません。
Die ihr am goldnen Quelle
Der sichern Jugend weilt,
Denkt doch an die Forelle;
Seht ihr Gefahr, so eilt!
Meist fehlt ihr nur aus Mangel
Der Klugheit. Madchen, seht
Verfuhrer mit der Angel!-
Sonst blutet ihr zu spat.
黄金の泉のほとりで
安穏な青春を送る君たち、
この鱒のことを心にかけなさい;
危険を見たら、すぐに逃げるのですよ!
たいていは知恵が足らずに
失敗するのですよ、君たちは。女の子たち、
竿を持った誘惑者に気をつけるのですよ!
そうしないと、血が流れてからでは遅いのですよ。
山地朝彦氏の解説は参考になると思いますので、別途全文コピーを用意します。
(末木)
シューベルト歌曲『鱒』の歌詞
平成14年6月24日
シューベルト歌曲『鱒』の歌詞
原詩と原作者シューバルトについては別の資料(NHKラジオドイツ語講座テキスト2000年 7月号の山地朝彦著「ドイツの詩歌でドイツ語を[16]『ます』」)をお読み下さい。ここでは一般に流布していると思われる歌詞を紹介します。
Die Forelle
In einem Bachlein helle ,
Da schos in froher Eil
Die launische Forelle
Voruber wie ein Pfeil .
Ich stand an dem Gestade
Und sah in suser Ruh
Des muntern Fischlein Bade
Im klaren Bachlein zu .
Ein Fischer mit der Rute
Wohl an dem Ufer stand ,
Und sah's mit kaltem Blute ,
Wie sich das Fischlein wand .
So lang' dem Wasser Helle ,
So dacht ich , nicht gebricht ,
So fangt er die Forelle
Mit seiner Angel nicht .
Doch endlich ward dem Diebe
Die Zeit zu lang . Er macht
Das Bachlein tuckisch trube
Und eh ich es gedacht ,
So zuckte seine Rute ,
Das Fischlein zappelt' dran ,
Und ich mit regem Blute
Sah die Betrogne an .
鱒
澄んだ小川に
気まぐれな鱒がうれしげに
矢のように
かすめ過ぎて行った。.
私は岸辺に立って、
快く、静けさにひたりながら
澄み切った小川に
この元気な魚が泳ぎゆくのを眺めた。
ひとりの漁師が釣竿をかついで、
岸に立った。
そしておちつきはらって
その魚がうねり泳ぐ様子を見つめた。
水が澄んでいるかぎり、
漁師の釣針に
鱒はかかるまい、
と私は思った。
けれども遂に盗人は
もどかしくなり、
悪賢くも小川をかきまわし濁らせた。
と思う間もなく、
その釣竿がぴくりと動いて、
魚は釣り上げられてはねまわった。
不憫さに心痛めつつ
欺かれて釣られた鱒を私は見ていた。
(注)歌詞と訳はシューベルト歌曲集(1)中声用(全音楽譜出版社発行第1版第88刷)に拠っています。 尚、訳詩者は小堀桂一郎氏です。
(末木)
Tiritomba
平成14年8月16日
第8曲の Forella Italianaは、『ティリトンバ(おまじない)』による編曲とありますが、Tiritombaについて、インターネットで検索しました。
Classical Vocal Repertoire:Neapolitan Songs(http://www.classicalvocalrep.com/cvr/Neapolitan.htm) には、ナポリの歌がリストアップされていて、O sole mio、Santa Luciaなどに並んで、Tiritomba "Sera jette"が入っている。
また、CD: ITALY --- FOLK SONGS FROM NAPLES --- (http://members.tripod.com/arlindo_correia/021201.html)には、イタリア語の歌詞がある。
ここでは、 hift-folksong.de - Folksongtexte(www.hift-folksongs.de/TexteFolk/t/tiritomba.htm )から、コード付きのイタリア語の歌詞を掲載する。
Tiritomba
D
1.Sera andai, sera andai
D
Per la marina,
A7 D
A trovar cola una bella,
D
Biancae rosa, biancae rosa
D
E ricciutella,
A7 D
Tutta vitae i larita.
Chorus:
G6 A7 D
Tiritomba, tiritomba,
A7 A
Tiritomba all'aria va all'aria va,
G6 A7 D
Tiritomba, tiritomba,
A7 D
Tiritomba all'aria va.
2.Passeggiando, passeggiando
In que' dintorni,
Un fischietto sento farmi,
Vo pian piano, vo pian piano:
Ad accostarmi,
E una donna veggio la.
Chorus: . . .
3.Era bella, era bella
Piu che bella,
Parea l'astro dell'amore.
Era chiodo, era chiodo
Che nel core
Penetrare addentro sa.
Chorus: . . .
4.Io la guardo, io la guardo,
Ed essa ride,
Io le parlo e mi risponde.
Ero un uom che, ero un uom che
Gia nell' onde
Dell' amore in fondo va.
Chorus: . . .
5.Quando veggio, quando veggio
In un momento
Il suo babbo, un omaccione.
Che minaccia, che minaccia
Col bastone
Di conciarmi come va.
Chorus: . . .
6.Me la svigno, me la svigno,
E si mi tolgo
Alle fere orrende botte.
Ma la bella, ma la bella
Giorno e notte
Sempre in core mi stara.
Chorus: . . .
さらに、www.acronet.net/~robokopp/Lieder/mandolin.html には、ドイツ語の歌詞がある。ただし、3番まで。
Tiritomba:Italienisches Volkslied
Mandolinen und Gitarren hell erlkingen,
Musikanten frohlich singen.
Alte Burschen, alle Madchen gehn zum Tanzen,
Und mein Liebster ist dabei.
Refrain:
Tiritomba, Tiritomba,
Immer mochte ich in deine Augen sehn.
Tiritomba, Tiritomba,
denn die Liebe ist so schon.
2. Und er sprach zu mir von Treue und von Liebe;
Ach, wenn's immer doch so bliebe!
Gab ein Ringlein mir und eine rote Rose
In der schonsten Nacht im Mai.
Refrain:
3. Eines Tages aber kam er nicht mehr wieder;
Es verklangen all die Lieber,
Und verbluht ist auch die dunkelrote Rose,
Denn das Ringlein brach entzwei.
Refrain:
(北川)